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法定養育費制度の説明


令和6年5月の民法改正(令和6年法律第33号)により、父母が離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合でも、一定額の養育費を請求できる「法定養育費制度」が新設されました。
この制度は、子の最低限度の生活を維持するために暫定的な支払いを認めるもので、子一人につき月額2万円と定められています。
また、この請求権には「子の監護費用の先取特権」が付与されるため、裁判所での債務名義を得なくても強制執行が可能になるなど、支払確保の実効性が高められています。本制度は改正法の施行後(2026年4月1日以降)に離婚した場合に適用されます。

制度の創設と目的

これまでの民法では、父母の協議や家庭裁判所の調停・審判の手続きによって養育費の額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。しかし、令和6年の改正(新民法766条の3第1項)により、父母間で養育費の分担について定めをすることなく協議離婚をした場合であっても、離婚時から引き続き子の監護を主として行う父母の一方は、他方に対し、一定額の「法定養育費」の支払を請求できるようになります。この制度は、子の最低限度の生活を維持するための暫定的・補充的な性質を持つものであり、当事者が利用しやすく、かつ予測可能性の高い制度とすることを目的としています。

法定養育費の金額と算定方法

法定養育費の具体的な金額については、父母の収入等の個別事情にかかわらず、法務省令の定めにより一律に算定されます。
法務省令案によれば、その額は子一人当たり月額2万円に、請求を行う親が主として監護する子の数を乗じた額となります。
この金額は、子の最低限度の生活維持に要する標準的な費用の額に加え、消費支出や生活保護基準、児童手当等の社会保障給付の動向などを勘案して定められています。
子が複数いる場合であっても、基準の明確性を考慮し、一律に2万円を人数分乗じる計算方法が採用されています。民法第三百八条の二の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令案に関する概要説明民法第三百八条の二の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令案に関する概要説明父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました。

請求権の発生期間と計算方法

法定養育費の請求権に関する時期の規定は以下の通りです(新民法766条の3第2項および省令案第2条第2項)。

  • 始期:離婚の日(離婚の日の属する月から請求可能)
  • 終期:父母間の協議や裁判所の審判により養育費の額が定められた日、または子が成年に達した日のいずれか早い日 また、始期や終期が属する月については、当該月の日数を基礎として日割計算を行うこととされています。毎月末に支払を請求することが可能です。

支払確保のための法的措置(先取特権)

改正法では、養育費の支払を確保するため、子の監護費用(養育費)の請求権に「一般先取特権」が付与されます(新民法308条の2)。これにより、以下の法的措置が可能となります。

  • 債務名義なしでの強制執行:通常、財産の差し押さえには公正証書や調停調書などの「債務名義」が必要ですが、法定養育費を含む養育費債権については、これらがなくても差し押さえの手続きを申し立てることが可能になります。
  • 優先弁済:他の一般債権者に優先して弁済を受けることができます。 なお、先取特権が付与される額の上限は、法務省令案第1条により、子一人当たり月額8万円に子の数を乗じた額とされています。法定養育費(月額2万円)の不払いについても、この先取特権に基づき差し押さえの手続きをとることができます。

施行時期と適用範囲

法定養育費制度については、改正法の施行後(2026年(令和8年)4月1日)に離婚した場合に請求することが可能です。また、先取特権については、施行前に養育費の取り決めがされていた場合でも、施行後に生じる養育費については適用の対象となります。

まとめ

法定養育費制度は、離婚時に詳細な取り決めができなかった家庭においても、子の生活を保護するために最低限の費用(月額2万円×子の数)を迅速かつ確実に確保できるようにする制度です。父母間の個別事情に基づくより妥当な額の決定は、引き続き協議や家庭裁判所の手続きによって行われることが前提となりますが、その合意がなされるまでの間の暫定的な権利として重要な役割を果たすものとされています。もちろん、父母の協議や家庭裁判所の調停・審判の手続きにより、養育費を月2万円以上とすることも可能です。
養育費の算定に関わる事案ついては、当事務所で多数取り扱っていますので、お気軽にご相談ください。


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